COLUMN

クリス-ウェブ 佳子 連載コラムVol.03
本当の意味でのラグジュアリー

2019.12.17

夢のない最近の学生ファッション事情 『WWD JAPAN』12月2日号の“SNS世代”特集に掲載された「全国の服飾専門学校生約1,600人に聞いた好きなブランドのトップ10」のアンケート結果に驚いた。

1位 ZARA
2位 GU
3位 UNIQLO
4位 H&M / BERCHKA
5位 YOHJI YAMAMOTO
[出典:https://www.wwdjapan.com/articles/986629]


上位に並ぶのはいずれも低価格を売りにするSPAブランドばかりだ。自由に使えるお金に余裕がないゆえ、本当であれば大好きなデザイナーズブランドを買いたいところをZARAで我慢、というのはよくある話だが、このアンケート結果が示すのはそういうことではない。多くの学生たち、しかも服飾を志す学生たちがZARAやH&Mを好きだというのだから、なんとも夢がない。

バンコクにあるタイ老舗ブランドSODAのショップ。
旅先では必ずご当地デザイナーブランドを購入する。

ファストファッションが台頭する以前、ファッション好きな学生たちはコツコツとアルバイト代を貯め込み、並んでまでして高額なデザイナーズブランドを買い求めた。夢を買い求めた。

ところが、現代ではラグジュアリーブランドのノックオフ(類似品)=で満足できてしまう。類似品を手に取り「これで良いか」と妥協できてしまう。そもそも、最近の学生はラグジュリーブランドに心惹かれることすらないのかもしれない。素材の良さ、独特な色合い、美しいシルエットやカッティング、着心地、どれくらい長く着られるかはさほど問題ではないのだろう。

流行りの○○風な服をSNSに随時更新できれば、“インスタ映え”すれば、きっとそれで良いのだろう。

“はやい、やすい、ナウい“の三原則

夢あるファッションはなぜ、そしていつ頃から廃れて始めたのか。その原因の発端は、1980年代初頭にアメリカのアパレル産業が採用したQR生産(クイックレスポンス生産)に起因していると思われる。製造業と流通業での情報共有をスムーズ化させ、生産から店頭までのリードタイムを短縮することで、アパレル企業は売れ筋を見極めた新規発注や迅速な追加生産を可能にしたが、それと同時に売り場では商品の同質化が引き起こった。

ホリデーシーズンにも関わらずパリで一番ラグジュアリーな
百貨店ボンメルシェも昨年に比べて閑散気味。

消費者に寄り添った商品開発やトレンドの一極集中化が度を越し、どの店に行っても同じような商品が陳列されるようになったのだ。そうなるとウィンドウショッピングすら楽しくなく、ワンパターンな売り場に辟易した消費者は自ずとオンラインに夢を求めるようになっていった。WWD JAPANの同号では、学生たちに「よく利用するショップ」に関するアンケート調査も行なっていて、案の定ZOZO TOWNが1位に、思わぬ掘り出し物に出会えるとしてメルカリが4位に、そして6位には楽天が、10位には世界中の商品が購入できるBUYMAがランクインしている。大手SCディベロッパーではルミネ新宿店が7位に、百貨店では伊勢丹新宿店が9位になんとかの現状で、もはや売り場に夢はないとも言える結果だ。

“安かろう悪かろう”の教訓

そうは言いつつも希望はある。「よく利用するショップ」のアンケート結果、その一端に希望の兆しがある。アンケート結果の4位に捨てる服を減らせるメルカリが、8位には“古きは良き”の価値を見出す古着店がランクインしているのだが、その背景に消費者の意識変化が見て取れるのだ。

ハワイにあるリサイクルショップのセイバーズ。
火曜日はシニアのみ30%OFFでとても賑わう。

1960年代に幕開けした大量生産・大量消費社会が終焉を迎える頃、安価で粗悪な商品は“安かろう悪かろう”と揶揄され、消費者志向は次第に品質重視へとシフトしていったのだが、ここにきて再び同じことが起こりつつある。

ただし、現代の“安かろう悪かろう”が指すのは商品ではない。私たち消費者が指摘するのは、問題視するのは、生産者の労働環境、そして大量生産と大量消費が地球環境に及ぼす悪循環、または企業体制そのものだ。

マラケシュのインテリアショップでラグを一生物の
ラグを物色中。服も同じ気持ちでいつも探している。

サスティナビリティに対する意識向上だけでなく、今後は消費者のファッションへの接し方、それ自体が原点回帰するであろうと期待されている。流行にとらわれすぎることなく長く着られる服、再び袖を通したいと思わせてくれる服を買う、それこそがサスティナブルあり、本当の意味でのラグジュアリーだということに人々は立ち返るだろう。

そして、感情的な結び付きを有する服を再び求め始めることだろうと。

*SPA = Specialty store retailer of Private label Apparelの略で、企画・生産、販売までを一貫しておこうない携帯の製造小売業を意味する。

*QR生産 = 製造業者と流通業者の間で情報共有を進め、生産から店頭までのリードタイムを短縮して市場の変動に素早く対応する生産方式。

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